就労ビザで在留する外国人は、家族が在留資格「家族滞在」になることで一緒に日本で暮らすことができます。この「家族滞在」という在留資格(ビザ)を取ることで、配偶者(妻・夫)や子を日本に呼ぶことができます。
当事務所には「就職・転職したばかりでも許可が出るか」というご質問をよくいただきます。本編では「家族滞在」のポイントを踏まえながらご質問に回答します。
働く外国人が日本で家族と一緒に住むには
就労ビザで在留する外国人は、日本に家族を呼んで一緒に生活をすることができます。「家族滞在」という在留資格(ビザ)を取ることで、日本で在留することができます。呼ぶことができるのは、妻・夫や子になります。
日本で一緒に暮らすことができる家族の範囲
日本で一緒に暮らすことができる家族は妻・夫や子です。家族は就労ビザで働く人の扶養を受けて日本で生活することになります。
呼ぶ側:扶養者(就労ビザを持つ外国人)の在留資格(ビザ)について
呼ぶ側・扶養者(就労ビザを持つ外国人)は、下記の在留資格(ビザ)を持っている場合には、家族を「家族滞在」で呼ぶことができます。例えば、「技能実習」や「特定技能1号」の場合は、家族を新たに日本に呼ぶことは原則認められておらず、全ての就労ビザで家族の帯同ができるわけではありません。
まずは、呼ぶ側・扶養者(就労ビザを持つ外国人)が、「家族滞在」で家族を呼ぶことができる就労ビザを持っているか確認をして下さい。
一部の就労ができる在留資格「特定活動」で在留している方も家族を呼べる場合がありますが、その場合は「家族滞在」ではない在留資格(考え方が「家族滞在」と同じ)で呼ぶことになります。
呼ばれる側:「家族滞在」を取ることができる家族の範囲
日本に呼ぶことができるのは「配偶者(妻・夫)」と「子」です。
配偶者は婚姻中である必要があります。離婚した場合や死去した場合は含まれません。また内縁の配偶者も認められません。「子」については養子(普通養子、特別養子)も認められます。また、婚姻する前に生まれた子どもや、婚姻後まもなくの間に生まれた子(非嫡出子)も認知をしていれば「子」として認められます。また、成年していても認められます。
一方で、親や祖父母を「家族滞在」で日本に呼ぶことはできません。他の在留資格にて、両親を日本に呼んで一緒に暮らすことが認められる場合もありますが、在留資格「家族滞在」は該当しません。
在留資格「家族滞在」の審査のポイント
在留資格「家族滞在」を申請する場合には、必ず確認をしたい3つのポイントがあります。まずはこのポイントを満たしていることを確認しましょう。
ポイント① 婚姻が成立していること(妻・夫の場合)
「家族滞在」の申請の際には、結婚が成立していることが条件となります。内縁関係、婚約状態では認められません。婚姻関係が法律上有効に存続していることが必要です。
結婚の手続きは、有効に成立していれば外国のみでも日本のみでも構いません(それぞれの国の法律によります)。例えば、母国にいる家族を招聘する場合に、わざわざ日本の役所で結婚届を出すことは必要なく、母国で結婚が成立していればそれを以って招へいすることは可能です。
また、逆に日本に在留中に結婚をした場合には、日本の役所に婚姻届けを提出し受理されていれば、母国の行政機関に提出ができていなくても問題ありません。
ポイント② 扶養をする能力があること/扶養を受けること
在留資格「家族滞在」では、就労ビザで働く方の“扶養”を受けることが要件となります。つまり、「扶養する能力がある」ことと、「扶養を受ける意思がありその状態で在留する」ことが必要です。
まず、「扶養する能力がある」についてですが、呼ぶ側が定職がある(お仕事をしている)必要があります。そもそも、就労ビザで在留している人は、(多くのケースで)フルタイムでお仕事をして、最低でも大人1人分の生活ができる程度のお給料をもらっているかと思います。無職の場合には、そもそも呼ぶ側が「就労ビザ」で在留するための条件が揃っていないので、家族を呼ぶことはできません。
よく、「どのぐらいの給料があれば許可されますか?」とお問合せをいただきますが、明確な基準はありません。それは、家族の人数や資産の状況等によって変わってくるからです。今現在の給料で日本で家族と問題なく生活できるだけの収入があれば問題ありません。
当事務所に聞こえてくる「噂」では、「月給25万円は必要」という話しがありますが、この情報は概ねデマと言えます。家族構成によっては「月給20万円」でも許可される場合もあれば、「月給30万円」でも不許可になる場合もあります。
次に、「扶養を受けること」についてですが、呼ばれる側は「家族滞在」の許可のほかに「資格外活動許可」というものを取ることで、アルバイトをすることも可能になりますが、あくまで「扶養の範囲」でなければなりません。
「家族滞在」で在留する人は「資格外活動許可」を得られれば、週28時間までのアルバイトが可能です。このアルバイトの結果、就労ビザで働く扶養者の給料を超えるようなことがあれば「扶養の範囲」を超えてしまっており、「扶養を受けていない」という評価を受けてしまいます。
ポイント③ 同居をすること
特に夫婦の場合には、同居をしていることが原則となります。
日本の入管は「婚姻関係」の判断基準の一つに「同居」に着目をします。同居をしていない場合には、全てのケースで不許可になるわけではありませんが、事情を説明する必要があります。
想定される例としては、子どもを転校させることができないなどの理由で単身赴任をする場合や、大学進学のために子供が一人暮らしを始めることなどが想定されます。特に夫婦間の別居に対してはしっかりとした説明が必要になるため注意が必要です。
【ケース別解説】就職後でもすぐ「家族滞在」は許可出る?
就職後や転職後、もしくは日本で就職が決まって渡日前であっても、前章で説明をしたポイントを満たしていれば「家族滞在」の申請は可能です。
※以下の回答はすべて、呼ぶ家族「1人」を想定しています。
ケース① 転職後、すぐに呼び寄せることは可能ですか?
「転職後、すぐに家族滞在を申請することができるか。何か月か待つ必要はあるか?」
よく聞かれる質問の一つです。多くのケースで、転職後すぐに呼ぶことはできます。2,3ヶ月待った方がよいか、と聞かれる場合もありますがこれは状況次第になります。基本的には「雇用条件書」や「労働条件通知書」などの、待遇や業務内容が確認できる書類を出すことができればそれで足ります。
ケース② 留学ビザから就労ビザへ変更中です。同時に申請は可能ですか?
「就職後、すぐに家族滞在を申請することができるか。2,3月か待つ必要はあるか?」
ケース①と同じ回答になりますが、多くのケースで就職後すぐに呼ぶことはできます。もしくは、留学から就労ビザへの「在留資格変更許可申請」中や同時に申請をすることも可能です。この場合には、呼ぶ側・扶養者(就労ビザを持つ外国人)の就労ビザが許可されることが最低条件になります。家族滞在だけ許可が出ることはありません。
ケース③ 現在は海外在住。日本で就職をしますが家族と同時入国は可能ですか?
「現在は海外に住んでいる。日本での就職をきっかけに家族全員で移住をしたいが、同時入国は可能か?」
こちらも可能です。例えば、扶養者(就労ビザで働く人)の就労ビザの申請と、その家族の「家族滞在」の申請を同時にすることも可能ですし、就労ビザの許可後に後から家族滞在を申請をして、家族全員許可後に同時に入国することも可能です。ただしいずれの場合にも、就職先の会社の協力が必要になる場合があります。
就労ビザと「家族滞在」を同時に申請する場合は、ケース②でも説明した通り、扶養者(就労ビザを持つ外国人)の就労ビザが許可されることが最低条件になります。家族滞在だけ許可が出ることはありません。
在留資格「家族滞在」の申請手続きについて
「家族滞在」の申請をする場合、要件を満たしていることを確認し、書類を揃えた後に住んでいる地域を管轄する「出入国在留管理局」で申請をします。
海外から家族を呼ぶ手続き ~在留資格認定証明書交付申請~
海外にいる家族(妻・夫・子)を日本に呼ぶ場合の手続きを「在留資格認定証明書交付申請」といいます。この手続きは、出入国在留管理局で呼ぶ側・扶養者(就労ビザを持つ外国人)が代理人となって手続きを行います。もし、夫婦ともに海外にいる場合には、就労ビザを申請した際に代理人となった就職予定先の会社が、代理人となって手続きをすることができます。
他の在留資格から家族滞在へ変更する手続き ~在留資格変更許可申請~
既に日本で生活している家族(妻・夫・子)の在留資格を「家族滞在」に変更する場合には、「在留資格変更許可申請」を行います。この手続きは、扶養される家族(妻・夫・子)が住んでいる地域を管轄する「出入国在留管理局」で手続きを行います。
必要書類について
配偶者(妻・夫)の場合 |
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・在留資格認定証明書交付申請書/在留資格変更許可申請書 ・証明写真 ・結婚証明書 ・扶養者の職業及び収入を証する文書(例:在職証明書、住民税の課税・納税証明書) ・在留カード/パスポート(※提示。在留資格変更許可申請の場合) |
子の場合 |
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・在留資格認定証明書交付申請書/在留資格変更許可申請書 ・証明写真 ・出生証明書/認知に係る証明書 ・扶養者の職業及び収入を証する文書(例:在職証明書、住民税の課税・納税証明書) ・在留カード/パスポート(※提示。在留資格変更許可申請の場合) |
※上記のほかに、生活について補足で説明する書類や過去の在留状況を示す書類を出す場合もあります。上記の内容は最低限の書類になります。
出入国在留管理局へ申請をする
基本的に申請は申請人の居所を管轄する入管、もしく外国人や申請代理人の居住地を管轄する入管で行います。
申請先については下記の通り 決まりがあります。
居住予定地もしくは申請代理人の住居地を管轄する地方出入国在留管理官署
【在留資格変更許可申請 or 在留期間更新許可申請】
住居地を管轄する地方出入国在留管理官署
地方出入国在留管理官署 | 管轄する区域 |
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札幌出入国在留管理局 | 北海道 |
仙台出入国在留管理局 | 宮城県、福島県、山形県、岩手県、秋田県、青森県 |
東京出入国在留管理局 | 東京都、神奈川県(横浜支局が管轄)、埼玉県、千葉県、茨城県、栃木県、 群馬県、山梨県、長野県、新潟県 |
名古屋出入国在留管理局 | 愛知県、三重県、静岡県、岐阜県、福井県、富山県、石川県 |
大阪出入国在留管理局 | 大阪府、京都府、兵庫県(神戸支局が管轄)、奈良県、滋賀県、和歌山県 |
広島出入国在留管理局 | 広島県、山口県、岡山県、鳥取県、島根県 |
福岡出入国在留管理局 | 福岡県、佐賀県、長崎県、大分県、熊本県、鹿児島県、宮崎県、 沖縄県(那覇支局が管轄) |
分局が近くにない場合には、最寄りの支局や出張所での申請も可能です。ただし、支局や出張所次第では在留資格の申請を受け付けていない場合もあるため確認が必要です。
▶出入国在留管理庁:管轄について
誰が申請をするのか
海外から呼び寄せる場合には、基本的には申請人(外国人)を招へいする本邦に居住する本人の親族が代理人として申請を行うことができます。『家族滞在』の場合で、夫婦ともに海外にいる場合には、本体者(扶養者)の受入機関(就職先)が申請代理人になって申請をすることができます。申請人の居住予定地か親族などの申請代理人の住居地を管轄する入管に申請に行きます。申請人が16歳未満の子どもの場合は、法定代理人(父母等)が代理人として申請することができます。
いずれの場合にも夫婦そろっての同時入国は条件が揃っていれば可能です。
一方、届け出を行っている「取次者」であれば、申請を代わって行うことができます。「取次者」の例として、行政書士、弁護士が該当します。
※行政書士に依頼することもできます。
まとめ
以上、在留資格「家族滞在」について解説しました。
「家族滞在」は、就労ビザで働く外国人の配偶者(妻・夫)や子が取得することができる在留資格です。「資格外活動許可」というものを取ることで、アルバイトをすることも可能です。
「家族滞在」は、就職後すぐに申請をすることができます。条雇用条件が決まっていて契約を交わした状態であり、その他の条件も満たしていれば、扶養者(就労ビザで働く外国人)の就労ビザの申請と同時に申請することも可能です。
【行政書士からのアドバイス】
1日でも早く日本で家族一緒に生活を始めたい、そう思われる方はたくさんいらっしゃいます。当事務所では、スムーズにかつ確実に申請手続きのサポートをさせていただいております。日本在住、海外在住どちらのケースも対応可能ですので、お気軽にお問合せ下さい。