国際結婚をした場合、日本で暮らす外国人は「日本人の配偶者等」や「永住者の配偶者等」、「家族滞在」に必ず変更をしなければならないでしょうか?変えなくても在留に影響がない場合は、あえて変えなければならないものでもありません。家族ビザは就労制限が無くメリットがたくさんあると思われがちですが、意外なデメリットもあります。本編では、家族ビザに変える必要がある場合の解説と、家族ビザのメリット・デメリットについて解説します。
国際結婚をしたら家族ビザに変えなければならないのか
答えは“No” 。変えなくても在留に影響がない場合はそのままで大丈夫です。
既に日本在住の方の場合で、別の在留資格(例えば、「技術・人文知識・国際業務」などの就労ビザ)で在留している場合には、日本人と結婚したらすぐに在留資格を「日本人の配偶者等」に変更しなければならないと言うことはありません。
これは、出入国在留管理庁のQ&Aにも記載されています。
Q.私は「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を持っており、在留期間もまだ1年ほど残っています。まもなく日本人の女性と結婚する予定ですが、在留資格の変更手続をしなければならないでしょうか。
出入国在留管理庁「出入国審査・在留審査Q&A」Q33より
A.日本での仕事に変更がなく、引き続き同じ仕事に従事されるのであれば、現在有している「技術・人文知識・国際業務」の在留資格のままで在留することも可能ですし、また、日本人と結婚された後に「日本人の配偶者等」の在留資格へ在留資格変更許可申請を行うことも可能です。なお、「日本人の配偶者等」への在留資格変更許可が認められた場合は、就労活動(職種)に制限がなくなります。
上記の通り、活動内容(仕事内容)に変更が無ければ、「日本人の配偶者等」に変えなければならないと言うことはありません。次の在留期間の更新のタイミングで変更をするのでもよいですし、すぐに変更してもよいですし、もしくは、次の更新のタイミングで、「今」の在留資格を期間更新をしても問題ありません。
(ただし、入管の相談窓口によっては変更することを“推奨”される場合もあるようです。)
家族ビザに変えなければならないケースについて
現在の在留資格の活動を辞める場合(例えば、仕事を辞める場合や、学校を卒業する場合)などは、在留期間が残っていたとしても、すみやかに変更をしなければなりません。ここでは「変えなければならないケース」について解説します。
大前提として、家族ビザの要件を満たしていなければ変えられない
大前提として、家族ビザ(「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」「家族滞在」など)に変えるために必要な条件を満たしていなければなりません。
これらの在留資格の要件には、審査される内容や厳しさ、基準に差がありますが共通している内容があります。また、国際結婚をした結果、何の在留資格が当てはまるのか(「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」「家族滞在」等)については、結婚した相手の国籍や在留資格に寄ります。
※本来は「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」「家族滞在」の3つの在留資格(ビザ)の要件を一緒くたにして説明はできないものなので、大枠として把握してください。
まず、結婚をして基本的には同居をし、生活を共にしている状態でなければなりません。婚約者であったり、これから結婚すると言った状態ではこれらのビザの申請はできません。ですので、次項で説明するような「家族ビザに変えなければならないケース」に当てはまる場合でも、結婚をしていない場合は、状況次第では一度帰国し、結婚が成立してから、新たに在留資格の申請をして日本に戻ってくる、ということになります。
また、当然ですがビザ目的の偽装結婚は違法ですのでお気を付けください。
家族ビザに変えなければならないケース
現在の在留資格で決められている活動をやめて、結婚生活を日本で送る場合には在留資格を変更する必要があります。よくある例として下記のケースがあります。
結婚を機に(婚姻期間中に)仕事を辞める
すでに、就労ビザ(例えば「技術・人文知識・国際業務」)を持って日本で働いていて、結婚を機に退職し、再就職もしない場合(専業主婦になる場合)は、就労ビザは働くことを条件にもらえるものになるため、「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」「家族滞在」などの家族ビザに変更する必要があります。
はじめに「結婚を機に」と説明していますが、これは婚姻期間中であればいつでも変更ができます。結婚届を出してから〇日以内でなければ変更できない、といったルールはありません。ただし、離婚をした場合や配偶者が亡くなってしまった場合には変更はできません。
学校の卒業と同時に結婚をする
学校を卒業して、就職をせず結婚をする場合には家族ビザに変更をします。ただし、学校を卒業して就職をし、仕事内容が就労ビザで認められている活動をする場合には、「技術・人文知識・国際業務」や「教育」といった就労ビザに変更することもできます。
仕事を辞めた場合や、学校を卒業した場合で今の在留期間が残っている場合でも、活動を辞めた日から3ヶ月以内に変更しなければ在留資格の取消事由に該当するため、はやめに変更する必要があります。
家族ビザに変えるとデメリットがある場合がある
家族ビザ(特に「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」)に在留資格(ビザ)を変更することは、メリットもあればデメリットもあります。
家族ビザに変えることのメリット
先に家族ビザに変更することのメリットについて説明します。
入管のQ&Aにもある通り、「日本人の配偶者等」では就労活動(職種)に制限はありません。
つまり、アルバイトや就労ビザで認められないような職種(例えば、「技術・人文知識・国際業務」で工場などのライン作業)、起業についても自由にできます。日本人と同じように自由に働くができます。
転職の際に、次の仕事内容がビザに合っている仕事か気にする必要もありませんし、前の会社を辞めてから次の会社が決まるまで無職の期間が長くても問題ありません。婚姻関係が継続している限り維持ができる在留資格ですので、働かなくても大丈夫です。
就労ビザは、無職期間について制限があったり、それぞれの在留資格毎にあった活動(業務)をしなければなりませんので、転職しようにも自由に仕事を選ぶことが難しかったり、会社も仕事内容の配慮が少なからず必要になります。一方で、家族ビザ(「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」「家族滞在」など)に変更すればこういったことの気にする必要な無くなります。
「家族滞在」の人は資格外活動許可を取れば扶養の範囲内かつ週28時間までのアルバイト・パートが可能です。 ただし、職種どのような仕事でもよいわけでは無く、風営法で規制されるような業種での従事はできません。
結婚前から就労ビザで働いている場合には、フルタイムの仕事を辞めないのであれば「家族滞在」に変更はしないほうがよいです
家族ビザに変えることのデメリット
婚姻期間中であれば、無職でもよく、「家族滞在」を除いて働き方は自由です。これはとても生活がしやすいため、「日本人の配偶者等」や「永住者の配偶者等」に変更される方は多くいます。しかし、「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」に変更することには最大のデメリットがあります。初めて家族ビザに変更をした場合、在留期間が「1年」になりやすいという点です。
これは、日本での在留が長く、それまで就労ビザで最長の「5年」の在留期間をもらっている場合であっても、「日本人の配偶者等」や「永住者の配偶者等」に変更した途端に「1年」になる場合もありますし、少なくありません。適切な在留を重ねることで、多くの方が「3年」や「5年」の在留期間をもらえるようにはなります。
日本人や永住者とご結婚されている方の場合、「永住者」になるための永住許可申請や「日本国籍」になるための帰化許可申請をする際に必要になる「日本での在留年数」の要件が、一般の方と比較して緩和されています。しかし、これらの申請をする場合には「3年」や「5年」の在留期間を持っていなければなりません(帰化許可申請はケースバイケース)。「日本人の配偶者等」や「永住者の配偶者等」に変更してすぐは「1年」の在留期間になってしまうことが多いため、これが原因で「永住者」や「日本国籍」になるための申請がすぐにできないという状況が起きてしまします。
つまり、すでに「3年」「5年」を持っていたら、家族ビザに変更していなければできた申請も、家族ビザに変えたことで申請が出来なくなる場合がある、ということになります。
よって、結婚をきっかけに在留資格(ビザ)を変更をすべきかどうかは、色々なことを慎重に検討してから決めたほうがよい場合もあります。
何より、「1年」という在留期間では、少なからず不安は感じるかと思いますし、不便なこともあるかと思います。「日本人の配偶者等」や「永住者の配偶者等」という在留資格はメリットもある一方でデメリットもあります。
「家族滞在」の人は、在留期間は就労ビザで働いている配偶者(妻・夫)の在留期間と同じになるように設定されます。
まとめ
以上、結婚を機に「日本人の配偶者等」や「永住者の配偶者等」、「家族滞在」などに変更したほうがよいか、という話題を解説しました。
結論としては、変えなくても在留ができる場合は、変える必要はなく、今までの活動を辞める場合には、変えなければ日本にいられない、と言うことになります。
特に「日本人の配偶者等」や「永住者の配偶者等」は就労制限が無く、また無職でいても問題無いため、とても生活にメリットがあるように感じられますが、多くの場合で初めて変更した時は「1年」になること、また「3年」「5年」をもらうまでに時間がかかるというデメリットもあります。これらは、「永住者」や「日本国籍」になるための必要な要件になるため、しばらく申請ができない原因になる場合もあります。