「定住者」の在留資格で日本で生活している外国人と結婚をした場合、その配偶者(妻・夫)も「定住者」に変更できる場合があります。「定住者」は身分系の在留資格に分類されますので、就労制限がありません。もし、現在、他の在留資格で在留している方の場合、「定住者」に変更したほうがより日本での生活がしやすくなる可能性があります。しかし、その分、審査はかなり慎重に行われ、準備もご自身たちの状況に合わせてしっかりとする必要があります。
本記事では、在留資格「定住者(告示5号)」の解説や申請手続きについて説明をします。
【回答】「定住者」の妻・夫は「定住者(告示5号)」で在留できます
在留資格「定住者」の方は、配偶者(妻・夫)を日本に呼ぶことができます。「定住者」の家族は、「定住者(告示5号)」という在留資格で在留することになります。
注意が必要なのは、申請する在留資格は「家族滞在」ではなく「定住者」です。「定住者」の在留資格を取った配偶者(妻・夫)は、資格外活動許可を取ることなく就労が可能です。
パターン① 海外にいる配偶者(妻・夫)を呼びたい
家族が海外にいる場合、家族は「定住者(告示5号)」の在留資格を申請します(手続き名は「在留資格認定証明書交付申請」)。もし、夫婦一緒に日本に移住する場合で、お二人とも「定住者」の在留資格が当てはまる場合には、夫婦同時に「定住者」を申請することができ、この場合は、日本に在住する親戚が移住予定の夫婦の申請をすることができます。
パターン② 国内に在留している人と結婚する
「定住者」で在留している方と結婚をした場合、配偶者(妻・夫)は別の在留資格で在留していた場合は、「定住者」に変えることができます(手続き名は「在留資格変更許可申請」)。
前述のとおり、「定住者」の場合は資格外活動許可を取ることなく就労が可能です。職種の制限はなく、また、フルタイムのお仕事でも可能です。
「定住者(告示5号)」を申請するときの3つのポイント
「定住者(告示5号)」の要件について説明します。
ポイント① 結婚関係が真実であること
「定住者」では、その婚姻関係が真実のものでなければなりません。
「真実でない結婚」というのは、ビザを取るためだけの結婚であり、実際には夫婦関係になっていない偽装結婚であったり、実質的には離婚状態であるのにもかかわらず、ビザのためだけに結婚関係を続けている場合などがあります。
「定住者」は、就労ビザと比較して永住者や日本国籍取得(帰化)の際に、緩和される要件があったり、就労制限がないことから、“使い勝手のよい在留資格”です。このために悪用されやすく、入管もこの「偽装結婚」については特に注意をしています。
上記の理由から、「定住者」の申請の中では、「質問書」という決まったフォーマットに、出会った経緯~交際に至った経緯~結婚に至った経緯を詳細に書いて、「真実の結婚」であることをアピールをしていかなければなりません。
恥ずかしいかもしれませんが、偽装結婚でなければ多くの情報をかけるはずですので詳細に記入をしていきます。場合によっては、その「質問書」の内容に加えて、電話の記録やチャットやメールでのやり取りなどかなりプライベートな内容も添付する必要があります。
ポイント② 結婚生活が、同居のもとお互いに助け合い支え合うものであること
「定住者」の在留資格の場合、明確な「年収要件」はありませんが、日本で安定した生活を送れることを証明する必要があります。基本的に2人の収入や財産によって毎月赤字を出さずに生活できることをアピールすることが重要です。収入は、外国人本人のものでも、配偶者(妻・夫)のものでも、もしくは両方(合計)でも、十分に生活できるだけの収入が見込めれば問題ありません。
夫婦そろって日本に生活拠点を移す場合など、入国時は無職である場合もあります。日本企業での内定が決まっていて十分な収入が見込める場合にはそれでも問題はありません。もしくは、日本に来てから就職活動をする場合には、当面の生活費について説明できなければなりません。この場合、貯蓄や親族からの援助などについて説明をすることになります。
「日本人の配偶者等」の申請では、住民税の「課税証明書」や「納税証明書」を提出することになります。税金の未納は、税金を払っていない場合、その申請者の経済的能力が不十分であると判断される可能性があるため注意が必要です。
また、入管は夫婦関係のポイントとして「同居」が一つのキーワードになってきます。今どき、夫婦の在り方は様々ですが、新婚の場合、よほどの事情が無い限り「同居」をしていなければ許可は得られにくくなります。
ポイント③ 書類がしっかり準備できていること
在留資格の審査の基本は「書面審査」です。申請するときに窓口で説明を聞いてもらえると言うことも無く、不許可になった場合に理由を教えてもらえる機会をもらえますが、そのときに説明すれば逆転して許可になることもありません。申請時に、しっかりと添付資料として申請書と一緒に提出できなければなりません。
入管のホームページに載っている必要書類リストは申請を受理するための最低限の内容です。場合によってはそれ以上の書類を集めて提出する必要もありますが、まずは必要書類リストに沿ってしっかりと漏れなく集めることが重要です。
申請手続きの流れを把握する
「定住者」の申請をする場合、要件を満たしていることを確認し、書類を揃えた後に住んでいる地域を管轄する「出入国在留管理局」で申請をします。
海外から配偶者を呼ぶ手続き ~在留資格認定証明書交付申請~
海外にいる家族(妻・夫)を日本に呼ぶ場合の手続きを「在留資格認定証明書交付申請」といいます。この手続きは、出入国在留管理局で呼ぶ側(「定住者」)が代理人となって手続きを行います。もし、夫婦ともに海外にいる場合には、日本在住の親族が代理人となって手続きをすることができます。
他の在留資格から「定住者」へ変更する手続き ~在留資格変更許可申請~
既に日本で生活している家族(妻・夫)の在留資格を「定住者」に変更する場合には、「在留資格変更許可申請」を行います。この手続きは、日本人の家族(妻・夫)が住んでいる地域を管轄する「出入国在留管理局」で手続きを行います。
必要書類について
配偶者(妻・夫)の場合 |
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・在留資格認定資格認定証明書交付申請書/在留資格変更許可申請書 ・パスポート(妻・夫) ・在留カード(「定住者」) ・証明写真 ・結婚証明書とその和訳 ・日本での滞在費用を証明する資料(収入証明や在籍照明など) ・配偶者(「定住者」)の身元保証書 ・配偶者(「定住者」)の世帯全員の記載のある住民票の写し ・質問書 ・夫婦間の交流が確認できる仕様(スナップ写真や通話記録等) |
「定住者」の配偶者として「定住者」の申請をする場合、かなり詳しく結婚に至るまでの経緯を説明しなければなりません。これは「偽装結婚」ではないことを自ら証明しなければならないことが理由です。「質問書」で詳細を記述することになりますが、それを補強するようなスナップ写真や通話記録等もたくさん提出しなければなりません。
出入国在留管理局へ申請をする
基本的に申請は申請人の居所を管轄する入管、もしく外国人や申請代理人の居住地を管轄する入管で行います。
申請先については下記の通り 決まりがあります。
居住予定地もしくは申請代理人の住居地を管轄する地方出入国在留管理官署
【在留資格変更許可申請 or 在留期間更新許可申請】
住居地を管轄する地方出入国在留管理官署
地方出入国在留管理官署 | 管轄する区域 |
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札幌出入国在留管理局 | 北海道 |
仙台出入国在留管理局 | 宮城県、福島県、山形県、岩手県、秋田県、青森県 |
東京出入国在留管理局 | 東京都、神奈川県(横浜支局が管轄)、埼玉県、千葉県、茨城県、栃木県、 群馬県、山梨県、長野県、新潟県 |
名古屋出入国在留管理局 | 愛知県、三重県、静岡県、岐阜県、福井県、富山県、石川県 |
大阪出入国在留管理局 | 大阪府、京都府、兵庫県(神戸支局が管轄)、奈良県、滋賀県、和歌山県 |
広島出入国在留管理局 | 広島県、山口県、岡山県、鳥取県、島根県 |
福岡出入国在留管理局 | 福岡県、佐賀県、長崎県、大分県、熊本県、鹿児島県、宮崎県、 沖縄県(那覇支局が管轄) |
分局が近くにない場合には、最寄りの支局や出張所での申請も可能です。ただし、支局や出張所次第では在留資格の申請を受け付けていない場合もあるため確認が必要です。
▶出入国在留管理庁:管轄について
誰が申請をするのか
海外から呼び寄せる場合には、基本的には申請人(外国人)を招へいする本邦に居住する定住者か、日本に在住する「定住者」の親族が代理人として申請を行うことができます。申請人の居住予定地か親族などの申請代理人の住居地を管轄する入管に申請に行きます。また、申請人(外国人)が日本に来ている場合は、申請人本人も申請することができます。申請人が16歳未満の子どもの場合は、法定代理人(父母等)が代理人として申請することができます。
いずれの場合にも夫婦そろっての同時入国は条件が揃っていれば可能です。
一方、届け出を行っている「取次者」であれば、申請を代わって行うことができます。「取次者」の例として、行政書士、弁護士が該当します。
※行政書士に依頼することもできます。
まとめ
以上、「定住者」で在留する外国人の配偶者(妻・夫)の在留資格について説明をしました。「定住者」の配偶者も「定住者」として日本で一緒に生活ができます。
「定住者」は就労制限がありませんので、活動制限を受ける在留資格とは異なり、融通が利きやすく日本で生活がしやすい在留資格である反面、審査が非常に厳しくなっています。「質問書」といった結婚に至るまでの経緯など詳細に説明をしなければならず、自分たちの結婚が偽装結婚でないことを積極的にアピールをしなければなりません。しっかりと準備をしたうえで申請をするようにしてください。