配偶者ビザが不許可に!行政書士が明かす5つの典型理由と回避策

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国際結婚を経て、日本で外国人配偶者と生活を始めるためには、「日本人の配偶者等」という在留資格の取得が不可欠です。このビザは、婚姻関係が真実かつ継続的であること、そして日本で安定した生活を営めることを、客観的資料をもとに証明して初めて許可されるものであり、決して簡単な手続きではありません。実際には、しっかり準備して臨んだはずの申請が「不許可」となり、戸惑うご夫婦も少なくありません。なぜ不許可になってしまうのか。その背景には、制度の厳格さと、些細な書類の不備・誤解が複雑に絡んでいます。
本記事では、多くの申請をサポートしてきた行政書士の立場から、不許可の典型例とその対策を解説します。

よくある不許可理由5つと具体的な対策

在留資格「日本人の配偶者等」の申請が不許可となる理由は多岐にわたりますが、突き詰めるといくつかの典型的なパターンに集約されます。ここでは、数多くのご相談を受けてきた中で特に多いと実感する5つの理由を、具体的な対策とともに解説します。

1.同居の事実・予定がない(別居中)

在留資格「日本人の配偶者等」は、夫婦が日本において安定的・継続的に共同生活を送ることを前提としています。したがって、正当な理由なく夫婦が別居している、あるいは今後も具体的な同居の予定がない場合、在留資格の根幹をなす要件を満たしていないと判断され、不許可の有力な原因となります。

審査官は、「なぜ同居しないのか。それは婚姻の実態がない、あるいはすでに破綻しているからではないか」という視点で申請を審査します。民法上も夫婦には同居・協力・扶助の義務が定められており、この義務が果たされていない状態は、真摯な婚姻関係とは認められません。

具体的な対策

原則として、速やかに同居を開始することが最善かつ唯一の解決策です。しかし、仕事の都合による単身赴任や、病気療養、DVからの避難など、社会通念上やむを得ないと認められる事情がある場合は、その事実を客観的な証拠とともに詳細に説明する必要があります。

具体的には、単身赴任であれば会社からの辞令や証明書、病気療養であれば医師の診断書などを提出します。その上で、別居は一時的なものであること、そして週末や休暇には必ず会っているなど、夫婦としての交流が継続している事実を交通機関の利用履歴や写真などで立証することが不可欠です。安易な自己判断による別居は、極めて高いリスクを伴います。

2.申請内容の矛盾・不備

これは極めて初歩的ですが、意外なほど多い不許可理由です。「質問書」に記載した内容と、添付した公的証明書(住民票、戸籍謄本など)の内容が異なるなど、提出した書類間で情報に矛盾があるケースです。

審査官は、毎日膨大な数の申請書類を審査するプロフェッショナルです。氏名や生年月日、住所、日付などの些細な食い違いも見逃しません。一つの矛盾は、申請全体の信憑性を大きく損ない、「何かを意図的に偽っているのではないか」という疑念を抱かせるには十分です。杜撰な書類作成は、申請に対する姿勢そのものが低いと評価されても仕方がありません。

具体的な対策

対策は「徹底した確認作業」に尽きます。申請書類一式を提出する前に必ず全てのコピーを取り、内容に矛盾がないか、複数回にわたって読み合わせを行ってください。ご自身だけでなく、可能であれば第三者の目を通す、いわゆるダブルチェック、トリプルチェックが有効です。特に、ご自身で記述する「質問書」と、市区町村役場などで取得する各種証明書との間で、情報が完全に一致しているか細心の注意を払う必要があります。

3.過去の法律違反(オーバーステイなど)

申請人である外国人配偶者に、過去のオーバーステイ(不法残留)や不法就労、あるいは犯罪歴などがある場合、素行が善良でないと判断され、不許可の原因となります。在留資格の審査においては、日本の法秩序を遵守する意思があるかどうかが厳しく見られます。

「過去に一度ルールを破った人物に、再び日本での在留を許可して良いのか」という厳しい視点に立って審査が行われることを覚悟しなければなりません。特に、出入国在留管理法に違反した経歴は、極めて深刻に受け止められます。

具体的な対策

最も重要なのは、不利な事実を正直に申告することです。これを隠して申請し、後に入管の調査で発覚した場合、虚偽申請として極めて重い処分が下され、将来的な在留資格取得が絶望的になる可能性があります。

不利な経歴がある場合は、その事実を正直に認めた上で、なぜそのような行為に至ったのか、現在はどのように深く反省しているのか、そして今後は日本の法規範を固く遵守することを誓う旨を記した「理由書(反省文)」を提出することが不可欠です。反省の情と更生の意思を、誠心誠意、文章で伝える努力が求められます。

4.経済的な安定性の証明不足

夫婦として日本で生活していく上で、公共の負担(生活保護など)になることなく、独立して生計を維持できる経済的な能力があるか。これは、審査における最重要項目の一つです。日本人配偶者または世帯全体の収入が低い、あるいは不安定であると判断された場合、「経済的安定性」が欠如しているとして不許可になります。

法律で「年収〇〇万円以上」という明確な基準が定められているわけではありませんが、実務上、扶養者となる日本人配偶者の住民税の課税・納税状況が極めて重視されます。年収の額面だけでなく、勤務先の規模や勤続年数、雇用形態などから総合的に「安定性・継続性」が判断されます。

具体的な対策

基本となる証明書類は、直近年度の「住民税課税証明書」および「納税証明書」です。ここに記載された所得額が低い、あるいは非課税となっている場合は、それを補うための追加資料が必須となります。

具体的には、

  • 預貯金の残高証明書(額は多いほど有利)
  • 両親や兄弟など、親族からの援助を証明する念書や身元保証書
  • 外国人配偶者が日本で就労する見込みがある場合は、雇用契約書や内定通知書
  • 不動産などの資産証明書

などを提出し、世帯全体として生計を維持できることを多角的に立証します。また、家賃やローンなどの具体的な支出状況と収入を対比させ、家計が問題なく成り立っていることを説明する「理由書」の作成も有効です。証明責任は全て申請者側にあることを肝に銘じ、万全の準備で臨む必要があります。

5.交際の信憑性(偽装結婚の疑い)

不許可理由の中で最も多く、かつ最も根本的なものが、この「婚姻の信憑性」に対する疑いです。「二人の結婚は、愛情に基づく真摯なものではなく、在留資格を得るためだけの偽装結婚ではないか」と審査官に判断された場合、他の要件をどれだけ満たしていても許可は下りません。

審査官は、出会いの経緯、交際期間、コミュニケーションの頻度や言語、お互いの親族への紹介の有無など、あらゆる角度から二人の関係が自然なものであるかを精査します。交際期間が極端に短い、会った回数が少ない、SNSで知り合ってすぐに結婚に至った、といったケースは、特に厳しい目で審査されることになります。

具体的な対策

愛情という主観的なものを、いかに客観的な証拠で立証するかが鍵となります。

  • 「質問書」の記述: テンプレートのような淡白な記述は厳禁です。出会った具体的な日付や場所、その時の状況、交際に至ったきっかけ、プロポーズの言葉やシチュエーション、お互いの家族に紹介した時のエピソードなど、二人にしか書けない固有のストーリーを時系列に沿って詳細に記述してください。これが最も重要な書類です。
  • 写真: 二人きりの写真だけでなく、双方の両親や兄弟、友人と一緒に写っている写真を複数枚、様々な時期・場所で撮影したものを提出してください。交際が閉鎖的でなく、公のものであったことの強力な証明となります。結婚式の写真があれば、言うまでもありません。
  • コミュニケーションの記録: LINEやWhatsApp、Facebookメッセンジャーでの日々のやり取りの履歴(抜粋で可)、国際電話の通話明細、Eメールなど、継続的に密なコミュニケーションを取ってきたことがわかる客観的な記録を添付します。

これらの証拠を丁寧に積み重ね、「私たちの結婚は真実です」という一点を、揺るぎない事実として証明することが求められます。

万が一、不許可になってしまったら

万全の準備で臨んだにもかかわらず、在留資格「日本人の配偶者等」の申請が不許可となった場合、その衝撃と絶望は計り知れないものがあるでしょう。しかし、ここで諦めてしまうのは早計です。不許可には必ず理由があり、次にとるべき正しい手順を踏むことで、許可を勝ち取る道は残されています。

まず、絶対に行うべきことは、申請したご本人が、管轄の出入国在留管理庁へ出向き、不許可理由の説明を受けることです。この理由説明は、原則として一度しか機会がなく、次の対策を立てる上で最も重要な情報源となります。どのような指摘を受けたのか、正確に記録してください。

次に、その不許可理由を精査し、原因となった問題点を完全にクリアするための対策を講じます。注意すべきは、一度不許可になると、再申請の審査は初回よりも格段に厳しくなるという事実です。審査官は「なぜ前回は不許可になったのか。その問題は、今回の申請でどう改善されたのか」という視点を加えて審査します。何の改善もせずに同じ書類で再申請しても、結果は火を見るより明らかです。

不許可理由を的確に分析し、それを覆すだけの客観的な証拠をもって再申請の戦略を構築するには、専門的な知識と経験が不可欠です。再申請を決意された段階で、ぜひ一度、私たち専門家にご相談ください。

まとめ

在留資格「日本人の配偶者等」の不許可理由を解説しました。理由は多岐にわたりますが、要点は「婚姻の信憑性」と「生活の安定性」を、客観的な証拠をもって立証できるかという二点に集約されます。
出入国在留管理庁は、提出された書面のみでこれらを判断します。そのため、「これくらい分かるだろう」という思い込みや、不利な事実を隠す行為は不許可に直結します。愛情という主観的なものを、いかに客観的に証明するかが鍵です。

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