出会ってすぐに結婚をした場合、在留資格「日本人の配偶者等」の審査が厳しめになってしまうのは事実です。「日本人の配偶者等」ではもちろん偽装結婚の場合は許可が出ませんが、いわゆるスピード婚の場合には、そのような可能性が他のパターンと比較して高い傾向にあるからです。偽装結婚ではないけれども、偽装結婚であることを「疑われているまま」では許可はもらえません。本編では、どのようなことに気を付けて、どのような説明・アピールをすることが効果的か解説をします。
交際期間が短いとなぜ、不許可になりやすいのか
「日本人の配偶者等」は、就労ビザと比較して永住者や日本国籍取得(帰化)の際に、緩和される要件があったり、就労制限がないことから、“使い勝手のよい在留資格”です。このために悪用されやすく、入管もこの「偽装結婚」については特に注意をして厳しく審査をしています。
交際期間が短いとは具体的にどのぐらい?
そもそも、「交際期間が短い」というのは明確な基準はありませんが、交際期間が6か月未満である場合は、「短い」と思われて慎重に判断される可能性があります。では7ヶ月からはOKかというわけではなく、結婚までにどのぐらい交流があったのかで判断されることになりますので、一つの目安程度にお考え下さい。日本人の考え的には、「1年未満」の交際の場合は「短め」と感じられる方が多いように思います。
在留資格「日本人の配偶者等」で審査されるポイント
「日本人の配偶者等」の審査では、特に以下の点について詳しく確認される傾向があります。
・結婚が適法なものであること
・結婚生活が、同居のもとお互いに助け合い支え合うものであること
具体的には、偽装結婚ではなく、収入があり問題なく生活できること、それから同居をして夫婦が支え合って生活することが審査のポイントになります。
今回は、「結婚が適法なものであること」にフォーカスをしていきますが、まず大前提として「日本人の配偶者等」では、その婚姻関係が真実のものでなければなりません。
「真実でない結婚」というのは、ビザを取るためだけの結婚であり、実際には夫婦関係になっていない偽装結婚であったり、実質的には離婚状態であるのにもかかわらず、ビザのためだけに結婚関係を続けている場合などがあります。
在留資格申請は基本的には「書面審査」がされますので、どのような経緯で結婚に至ったかを質問するための決められたフォーマット“質問書”があります。この「質問書」という決まったフォーマットに、出会った経緯~交際に至った経緯~結婚に至った経緯を詳細に書いて、「真実の結婚」であることをアピールをしていかなければなりません。
「質問書」では様々な項目がありますが、いくつかピックアップして紹介します。
交際期間は「質問書」で確認される
昨今、様々なスタイルの結婚生活がありますが、入管の考えは基本的には変わっていません。結婚が真実のものであれば、出会いから結婚までの深い経緯があるはずという一つの軸を持っています。これについては「質問書」で詳細に答えることになります。
思い出すだけでも恥ずかしいと思われるかもしれませんが、「できるだけ詳しく記載してください」と書かれている通り、かなり詳細に書かれたほうがよいです。以下は記載する内容の一例です。
【交際するまでの交流】出会いから交際するまでの期間、交流回数、お互いどこに惹かれて、何がきっかけで交際するようになったのか
【交際期間中】交際期間中のコミュニケーションの頻度、交際について(どこに行ったか、月間何回ぐらい会っていたか)、お互いの国に行き来をしたか
【結婚の検討】いつ頃から結婚を意識するようになったのか、その相手と結婚しようと決心したきっかけやタイミング
【結婚】プロポーズについて、お互いの両親や親族への紹介
【結婚から現在、将来】家族構成・夫婦関係への言及、仕事内容などの生活について、(日本にいる人の場合は)日本での生活について ※結婚に至った経緯と絡めながらまとめるよよいと思います。
※これらを時系列に整理しながら書くとよいです。
何回ぐらいお互いの国を行き来しているか
また、「質問7」「質問8」については、お互いの国の往来について質問されます。ここの項目はパスポートを見ながら正確に書いたほうがよいです。また、面倒くさがらず全てを記載しましょう。
特に、お互いに母国にいながら紹介で出会った場合で、交際期間が短い場合やほとんど会ったことが無い場合には、結婚に至るまでにどのような経緯があったのか十分に説明する必要があります。
コミュニケーションの方法についても質問される
「質問3」では夫婦間のコミュニケーションについて質問されます。どちらかが相手国の言葉を話せれば説明が簡単ですが、そうでない場合もあると思います。この質問の他に、言語の習得についてやコミュニケーション方法について質問があります。お互いの母国語で会話していない場合には、夫婦間で使用している言語があればそれを説明をし、翻訳アプリや通訳者を介して会話をしている場合は、それが分かるように説明をします。
「夫婦間の交流が確認できる資料」は何をどのぐらい出せばよい?
「日本人の配偶者等」では、「質問書」の回答に加えて交流状況を説明する資料を提出しますが、具体的には以下のことに気を付けながら様々な資料を提出するのが効果的です。
コミュニケーションの記録や写真が効果的
在留資格の審査は提出された資料から判断される「書面審査」です。
前に見た「質問書」からも読み取れる通り、結婚までに何回程度会ったのか、また、コミュニケーションについて確認されます。「日本人の配偶者等」の必要書類リストにある通り「夫婦間の交流が確認できる資料」を提出することになりますが、メールの写しや、LINEなどのチャットツールのスクリーンショット、通話履歴などを出します。
また、写真については様々なシチュエーションで複数枚提出します。様々なシチュエーションの例として、2人のデートの写真に加え、家族に紹介したときなどの親族写真、結婚式の写真などを提出します。
これらの資料については、交際期間が短い場合には可能な限り多く提出するのがよいです。
-LINEなどのチャットツールでの会社のスクリーンショット
-メールの写し
-着信履歴
●写真(様々なシチュエーションのもの)
-デート写真
-親族を含めた写真
-結婚式の写真
もし、記録や写真が出せないとき
もし、コミュニケーションの記録や一緒に出掛けた写真や家族写真を出すことができないとき、理由が「恥ずかしい」であれば、許可のために我慢をして出しましょう。
しかし、まったくない場合については、申請の方針を考え直した方がよいでしょう。今回のテーマである「出会ってすぐに結婚」し、そのあとすぐに在留資格申請をする場合は、入管が偽装結婚の可能性を疑う【典型的なパターン】です。交際期間が短いことも一つの要因ですので、交際期間を少し伸ばして、普段は写真を撮らない方であれば意識して写真を撮ったり、コミュニケーションの記録やその他交際に関しての証拠を残す期間をあえて作ってもよいかと思います。
まとめ
以上、交際期間が短い国際結婚の場合の在留資格申請の際の注意点などを説明しました。
交際期間が短い場合、偽装結婚を疑われることがあり、それを払しょくするために可能な限り多くの真実の結婚であることの証拠書類を提出したほうがよいことに違いはありません。もし、十分な夫婦間の交流が確認できる資料が提出できない場合には、交際期間をしっかりとってから結婚することも一つの選択肢です。