日本人と結婚していて「日本人の配偶者等」の在留資格(ビザ)で生活している人は、離婚をした場合は、離婚をした日から6ヶ月以内に別の在留資格に変更するか、帰国をするかを決めなければなりません。在留資格(ビザ)を変更する場合には、就職をした場合・している場合は就労ビザ、6ヶ月に再婚した場合は家族ビザを検討します。日本での結婚生活が長い場合や子どもがいる場合などは、「定住者」が選べる場合もあります。
離婚後、在留期限が残っていてもすぐにビザの変更は必要?
離婚をした場合に、在留期限が残っている場合でも、日本に問題無く在留できるのは離婚の日から6ヶ月までです。6ヶ月を超えると在留資格の取消事由に該当し、入管から帰国を促されても仕方の無い期間になります。6ヶ月を超えてから他の在留資格への変更の申請を行うと、審査が不利になることもあるため早めに手続きを行うことがよいです。
離婚後2週間以内に入管へ届出を
配偶者(妻・夫)と離婚や死別をした場合、離婚・死別をした日から14日以内に入管に対して「配偶者に関する届出」を出さなければなりません。もし14日を過ぎてしまっている場合でも、今から出したのでも遅くありません。離婚後、「日本人の配偶者等」の在留資格について、変更する場合があるのでしたら、この届出を提出しないことで審査が不利になってしまいます。必ず提出するようにしましょう。
▶出入国在留管理庁:「配偶者に関する届出」
離婚から6ヶ月以内に在留資格(ビザ)の変更が必要
在留資格「日本人の配偶者等」は、日本人と結婚している配偶者(妻や夫)が取得できる在留資格です。つまり、離婚をして配偶者ではなくなった場合、6ヶ月以内に在留資格(ビザ)の変更をするか、日本から出国するのが基本的なルールになります。もし、6ヶ月を超えても「日本人の配偶者等」の場合、例え在留期間がまだ残っていた場合でも、「在留資格の取消事由」に該当します。6ヶ月を1日でも過ぎたことで入管に呼び出される、と言うことは少ないかと思いますが、6ヶ月を超えて在留資格を変える手続きを行った場合、多くのケースで入管から理由を聞かれるか、もしくは審査が不利になる可能性があります。
変更をする場合、何の在留資格(ビザ)に変更すればよいか?
離婚をした場合、そのままの状態で日本にいるわけにはいかないため、在留資格(ビザ)の変更を検討します。就職した場合には就労ビザ、再婚した場合には家族ビザ、日本に残らなければならない事情がある場合には定住者ビザを検討します。
就職している(する)場合は、就労ビザ
就職している方の場合や無職の方の場合でも生計を維持するために就職を検討されるのではないかと思いますが、就職している(する)場合は就労系の在留資格を検討します。
サラリーマンとなってお給料をもらう場合、「技術・人文知識・国際業務」「技能」「特定技能1号」などが該当し、起業をする場合には「経営・管理」などの在留資格(ビザ)が該当します。また、その中でも特に優秀な方の場合には「高度専門職1号」を申請できる場合もあります。それぞれの在留資格によって学歴・職歴要件や可能な業務内容の範囲が異なります。以下によく取得されている就労ビザの一例をまとめました。
再婚する場合は、家族ビザ
6ヶ月以内に再婚をし、他の家族ビザに変更することも制度上は可能です。
この場合、再婚相手の国籍や在留資格によって変更の有無や申請をする在留資格は変わってきます。例えば、再婚相手が日本人の場合はそのまま「日本人の配偶者等」になるため、次の更新まで在留資格申請は不要です。永住者と結婚した場合は「永住者の配偶者等」、就労ビザを持っている人と結婚した場合には「家族滞在」や「特定活動」といった在留資格を検討します。この場合、注意点がいくつかあります。
まず、当然ですが、在留だけを目的とした偽装結婚は認められません。再婚に限らず、交際期間が短い2人の結婚からの在留資格申請は審査が厳しくなる傾向があります。6ヶ月以内の再婚の場合、偽装結婚が疑われやすくなるので注意が必要です。また、日本は民法で再婚待機期間があり(2023年7月現在)、これは日本で結婚する外国人も適用されます。結婚ビザは結婚後に申請しますのでよく確認をして下さい。
次に、変更したい在留資格(ビザ)が「家族滞在」の場合は、「日本人の配偶者等」とちがって扶養内で生活することが前提となるため就労制限があります。「資格外活動許可」を取れば週28時間までアルバイトなどは可能になりますが、フルタイムでお仕事をされていた方の場合はそれまで通りの就労は難しくなります。
その他日本に残らなければならない事情がある場合(定住者)
例えば日本での結婚生活が長く、母国に戻っても家族も仕事も無く、帰国することで不利益がある場合や、日本人の実子がいて親権があって日本で子育てをする場合には、「定住者」の在留資格を申請できる場合があります(“離婚定住”という呼び方をしています)。
ただし、この「定住者」という在留資格は、どうしてものやむを得ない事情がある方が申請できるもので、一定の審査基準があり、日本人と離婚した人すべてが取得できるものではありません。
定住者を申請する
日本での結婚生活が長い方やお子さんを日本で育てたい場合、「定住者」が認められる場合があります。申請のためには、しっかりとした準備が必要な在留資格(ビザ)になります。
離婚した後の定住者を申請できる場合
そもそもこの「定住者」(離婚定住)は、審査基準は発表されていません。そのため下記を満たしていれば必ず許可がもらえるものでは無いですし、下記を満たしていない場合でも許可になる場合もあります。
・離婚後、子どもの親権を持ち、日本でその子ども(※2)を育てる場合
(日本人との子どもがいる場合は婚姻期間は3年未満でも許可になる可能性は高いです)
※1:離婚協議中など別居をしている期間が長い場合、「一定期間の婚姻関係(結婚生活)が継続していた」と判断されない場合があります。
※2:実子の国籍は問われませんが、出生時点において父または母が日本国籍を有していることが条件になります。
また、出入国在留管理庁のHPには「日本人の配偶者等」からの許可事例、不許可事例が掲載されています。少し古い情報ですがご確認ください。
▶出入国在留管理庁:「「日本人の配偶者等」又は「永住者の配偶者等」から「定住者」への在留資格変更許可が認められた事例及び認められなかった事例について」
在留資格を「定住者」に変更する手続き
「定住者」(離婚定住)の申請は、住居地を管轄する入管で手続きをします。手続きは本人が基本的に行いますが、申請取次ができる行政書士や弁護士に依頼することもできます。
いつまでに手続きをするのか
離婚後、就労ビザに変更する場合には雇用契約を締結次第、速やかに申請をします。また、再婚をした場合は結婚が成立後に申請をします。前にも説明した通り、日本人と再度結婚した場合は、次の更新手続きまで在留資格申請は不要です(「配偶者に関する届出」は必要です)。定住者については準備でき次第になりますが、いずれの場合にも離婚から6ヶ月以内に手続きをしましょう。
※この「定住者」については在留資格変更許可申請しかできません。一度在留カードを返納した後に、再入国するための手続き「在留資格認定証明書交付申請」はできません。
必要な書類について
離婚をした方の「定住者」(いわゆる離婚定住)は、個別の状況に合わせて必要書類を準備をします。以下は一例になります。
必要書類(一例) |
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・在留資格変更許可申請書 ・証明写真 ・日本人実子の戸籍謄本 ・離婚証明受理証明書 ・雇用条件通知書/在職証明書 ・貯金通帳のコピー ・住民税の課税証明書、納税証明書 ・身元保証書 ・住民票 ・理由書 ・在留カード、パスポート(窓口で提示) |
理由書については日本に残らなければならない理由、日本で生活が問題無くできるだけの収入があることなど、しっかりと状況の説明をA4 2ページ程度でまとめるのがよいです。入管の審査官が知りたいであろ情報は漏らさず、でも簡潔に書くことがポイントです。
まとめ
以上、日本人と結婚していた外国人が離婚した場合について解説をしました。
まず、離婚をした場合14日以内に入管に「配偶者に関する届出」を行わなければなりません。その後、6ヶ月以内に他の在留資格(ビザ)を変更するか、帰国するか、ご自身の今後の方針を決めて入管に対して手続きを行うことになります。離婚をした場合で日本での生活が長い場合や小さいお子さんを日本で育てたい場合など、「定住者」という在留資格(ビザ)が取れる場合があります。いずれにしても、ご自身の状況に合わせて慎重に検討する必要はあります。
【行政書士からのアドバイス】
傾向にはなりますが、離婚された場合などで「日本人の配偶者等」から別の在留資格(ビザ)に変更する際には、審査は厳し目になることが多くなっています。
特に「定住者」に変更する場合は、添付する書類や理由書については、できる限りビザに詳しい人のアドバイスを受けながら丁寧に準備をするのがよいです。