「日本人の配偶者等」の在留資格(ビザ)を申請する際、必要書類の一つに「質問書」があります。この「質問書」をみると、出会いから、交際、結婚に至るまで、また現在に至るまでについて聞かれることが分かります。これらは「偽装結婚」ではないかを確認するために質問される内容になるため、なるべく詳細に書くことが望ましいです。本編では、「質問書」の質問内容からどのようなケースが「偽装結婚」を疑われやすいか、代表的な例を見ていきたいと思います。
※「永住者の配偶者等」の「質問書」においての注意点も同じになります。参考にして下さい。
在留資格「日本人の配偶者等」の審査ポイント
「日本人の配偶者等」の在留資格(ビザ)では、「結婚関係が真実のものであるか」と、「経済的に安定して生活できるか」の大きく2つのテーマを中心に審査されます。細かいテーマは他にもたくさんありますが、本編では「結婚関係が真実のものであるか」について解説します。
ポイント① 結婚関係が真実であること
「日本人の配偶者等」では、その婚姻関係が真実のものでなければなりません。
「真実でない結婚」というのは、ビザを取るためだけの結婚であり、実際には夫婦関係になっていない偽装結婚であったり、実質的には離婚状態であるのにもかかわらず、ビザのためだけに結婚関係を続けている場合などがあります。
「日本人の配偶者等」は、就労ビザと比較して永住者や日本国籍取得(帰化)の際に、緩和される要件があったり、就労制限がないことから、“使い勝手のよい在留資格”です。このために悪用されやすく、入管もこの「偽装結婚」については特に注意をしています。
以上の経緯から、「日本人の配偶者等」の申請の中では、「質問書」という決まったフォーマットに、出会った経緯~交際に至った経緯~結婚に至った経緯を詳細に書いて、「真実の結婚」であることをアピールをしていかなければなりません。
この「質問書」では、特に「出会い」や「交際期間」についてが、「偽装結婚が多いパターン」に該当していないかをチェックされます。もし、このパターンに該当するような場合には、「偽装結婚」では無いことを積極的にアピールをしたほうがよりスムーズに許可を得られると言えます。
ポイント② 結婚生活が、同居のもとお互いに助け合い支え合うものであること
「日本人の配偶者等」の在留資格の場合、明確な「年収要件」はありませんが、日本で安定した生活を送れることを証明する必要があります。基本的に2人の収入や財産によって毎月赤字を出さずに生活できることをアピールすることが重要です。収入は、外国人本人のものでも、配偶者(妻・夫)のものでも、もしくは両方(合計)でも、十分に生活できるだけの収入が見込めていれば概ね問題ありません。
本編では、「質問書」(出会った経緯~交際に至った経緯~結婚に至った経緯)を中心に見ていきます。ポイント②の「年収」についての詳細は以下の記事で解説をしているため、こちらも参考にして下さい。
質問書では主に「結婚関係が真実」かどうかを確認している
「日本人の配偶者等」は、在留資格の取得目的の偽装結婚が多く、入管も厳しく審査をしています。特に疑われやすい「出会い」や「交際期間中」について代表例を挙げ、「質問書」内でどのような聞き方をされるのかを説明致します。
「結婚関係が真実でない」と疑われやすいケース(代表例)
以下は特に「偽装結婚」ではないかと疑われる事例になります。
・交際期間が極端に短い場合
・お互いの言葉が通じない場合
・かなりの年齢差がある場合
・日本人側が過去にも外国人との結婚を繰り返している場合
今どき婚活アプリを利用することも、交際期間が短い、いわゆるスピード婚もよくある結婚だと思います。しかし、審査は「書面」のみで審査をされるので、提出された書類をみて「結婚関係が真実である」ことを読み取れなければ許可をもらえません。上記に該当するケースや上記に類似しているケースの場合には、意識をして「結婚関係が真実である」ことをアピールすることをお勧めします。
「偽装結婚」を疑われた場合、本当に偽装結婚でなくても「疑われているまま」では許可はもらえません。しかし、入管の審査官は提出された書類のみで判断されなければなりません。そのため、自分から「真実の結婚関係」であることをしっかりと説明する必要があります。
「質問書」ではどのような聞き方をしているか
では、実際の質問書を部分的に抜粋しながら確認してみましょう。
結婚に至ったいきさつについて 出会い~交際~結婚~現在について
まず初めに基本的なステータスを「質問1」で聞かれた後、早速、「質問2」から踏み込んだ質問が聞かれます。
思い出すだけでも恥ずかしいと思われるかもしれませんが、「できるだけ詳しく記載してください」と書かれている通り、かなり詳細に書かれたほうがよいです。以下は記載する内容の一例です。
【交際するまでの交流】出会いから交際するまでの期間、交流回数、お互いどこに惹かれて、何がきっかけで交際するようになったのか
【交際期間中】交際期間中のコミュニケーションの頻度、交際について(どこに行ったか、月間何回ぐらい会っていたか)、お互いの国に行き来をしたか
【結婚の検討】いつ頃から結婚を意識するようになったのか、その相手と結婚しようと決心したきっかけやタイミング
【結婚】プロポーズについて、お互いの両親や親族への紹介
【結婚から現在、将来】家族構成・夫婦関係への言及、仕事内容などの生活について、(日本にいる人の場合は)日本での生活について ※結婚に至った経緯と絡めながらまとめるよよいと思います。
※これらを時系列に整理しながら書くとよいです。
「結婚に至るまでのいきさつ」で説明した以降は、「質問書」内であまり説明するスペースがありません。このため、「偽装結婚を疑われやすケース」に該当すると感じた場合には、(1)の記述欄に詳細に説明をするか、別紙に「説明書」を作成して詳細に説明をするのがよいです。
出会いのきっかけに紹介者がいるかどうか
上記のように「結婚に至るまでのいきさつ」を書いたうえで、具体的な項目について以下のように質問をされていきます。まずは、紹介者の有無についてです。特に結婚相談所を利用された場合には、紹介者と申請人との関係について、利用のきっかけ(結婚に対する思い)なども含めて詳しく書くのがよいでしょう。
交際期間中について ~言葉の問題や期間~
「質問3」では夫婦間のコミュニケーションについて質問されます。どちらかが相手国の言葉を話せれば説明が簡単ですが、そうでない場合もあると思います。この上の図に続いて(5)(6)の質問では、言語の習得についてやコミュニケーション方法について質問があります。お互いの母国語で会話していない場合には、夫婦間で使用している言語があればそれを説明をし、翻訳アプリや通訳者を介して会話をしている場合は、それが分かるように説明をします。
「日本人の配偶者等」では日本語レベルは要件に無いですが、コミュニケーションを深めるために行っている努力など(例えば、語学スクールに通っているなど)は積極的にアピールをするのがよいでしょう。
また、「質問7」「質問8」については、お互いの国の往来について質問されます。ここの項目はパスポートを見ながら正確に書いたほうがよいです。また、面倒くさがらず全てを記載しましょう。
特に、お互いに母国にいながら紹介で出会った場合で、交際期間が短い場合やほとんど会ったことが無い場合には、結婚に至るまでにどのような経緯があったのか十分に説明する必要があります。
日本人側が過去にも外国人との結婚を繰り返していないか
日本人と結婚をすると、「日本人の配偶者等」という在留資格がもらえ、そしてこの在留資格は就労制限が無く、また「日本人と結婚している」という事実は、永住申請や帰化申請の際の要件緩和ポイントになります。このため、お金目的に結婚と離婚を繰り返す人もいます。
「質問6」の質問の意図としては、再婚では許可が出ない、と言うことではなく、別の目的で結婚をしていないかを確認するためにあります。
「質問書」では回答しきれないときの対策方法
前述の通り、質問書を見て分かる通り、それぞれの項目について「質問2」のいきさつを除いて、文章を書くスペースはほとんどありません。そのため、「この点が審査官に疑問に思われるかな」と思っても、「質問書」内では詳細に説明する機会がありません。
この様な場合には、別紙に「説明書」をフリーフォーマットで作成し、詳細に説明することをお勧めします。また、交流を図っていることを示すために、メールやSNSでのメッセージのやりとり、電話の通話記録などのスクリーンショット画面を多めに提出するのも効果的です。スナップ写真についても、入管HPに掲載されている必要書類リストには「2、3葉(枚)」と書かれていますが、時系列やイベントごとに多めに提出してもよいです。
▶出入国細粒管理庁:在留資格「日本人の配偶者等」(外国人(申請人)の方が日本人の配偶者(夫又は妻)である場合)
まとめ
以上、「質問書」の項目から見る「日本人配偶者等」の審査のポイントについて解説しました。
「偽装結婚」を疑われた場合、「疑われているまま」では許可はもらえません。自分から「真実の結婚関係」であることを説明しなければなりません。審査は書面で行われるので、提出物だけで審査官に読み取ってもらう必要があります。このため、しっかりと「質問書」と場合によっては「説明書」、それから交流状況を客観的に示す写真などを用いて、アピールをしなければなりません。
【行政書士からのアドバイス】
質問書はかなり詳しく書いたほうがよいです。でも、どのように「詳しく」書けばよいか分からない場合もあるかと思います。その時には、是非、当事務所にご相談ください。