在留資格「特定活動」のなかでも、就労が可能な活動目的で在留している場合には、家族の帯同が認められているものもあります。この場合は、家族の方が取れる在留資格は「家族滞在」ではありませんが、扶養者と同じく「特定活動」で在留をすることになり、内容は「家族滞在」とほとんど同じです。
本編では、どのような「特定活動」で在留している人であれば家族の帯同が認められるのか、またその要件について解説します。
在留資格「特定活動」の方の家族のビザについて
在留資格「特定活動」をお持ちの外国人で、家族の帯同が認められている方は、主に就労系の特定活動で在留している方になります。逆を言うと、例えば「出国準備」や「就職活動」などの目的で在留している「特定活動」の方の場合は、家族の帯同は難しいといえます。
また、「告示」で定めがある方の場合は、「在留資格認定証明書交付申請」や在外の日本大使館で査証申請を行って「特定活動」の在留資格で上陸することもでき、つまり、家族を海外から呼び寄せることもできます。特定活動で家族を呼ぶことができるものは下記の一覧の通りです。
扶養者の在留資格 | 家族の在留資格 | 補足 |
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「特定活動(6号・アマチュアスポーツ選手)」 | 「特定活動(7号)」 | |
「高度専門職1号」 「高度専門職2号」 | ・「家族滞在」 ・「特定活動(33号)」 ・「特定活動(34号)」 | ・特定活動(33号・高度専門職外国人の就労する配偶者)は就労を希望する配偶者が取得可能 ・特定活動(34号・高度専門職外国人又はその配偶者の親)は一定の要件下で親が取得可能 |
「特定活動(36号・特定研究等活動)」 「特定活動(37号・特定情報処理活動)」 | ・「特定活動(38号)」 ・「特定活動(39号)」 | ・特定活動(38号・特定研究等活動の配偶者)は配偶者が取得可能 ・特定活動(39号・特定情報処理活動又はその配偶者の親)は一定の要件かで親が取得可能 |
EPA・看護師・介護福祉士関係 「特定活動(16号、17号、19号、20号、21号、22号、27号、28号、2 9号)」 | 「特定活動(18号、19号、23号、24号、30号31号)」 ※それぞれ対応するものを選択 | 基本的な考え方は「家族滞在」と同じ |
「特定活動(44号・外国人起業家)」 | 「特定活動(45号)」 | 基本的な考え方は「家族滞在」と同じ |
「特定活動(46号・本邦の大学卒業者)」 | 「特定活動(47号)」 | 基本的な考え方は「家族滞在」と同じ |
「特定技能1号」 | 「特定活動」 ※告示外 | 特定技能1号になる前から家族で在留していることが条件。 海外からの呼び寄せは原則不可 その他は、基本的な考え方は「家族滞在」と同じ |
「家族滞在」ではなく「特定活動」になるが、内容は同じ
働く外国人の方の家族の在留資格(ビザ)で一番聞きなじみがあるものとして「家族滞在」がありますが、「特定活動」で在留する外国人の家族のビザは同じく「特定活動」となります。基本的な考え方は「家族滞在」と同じになります。
家族を呼べる範囲について
就労ビザで働く外国人の「配偶者(妻・夫)」や「子」を、日本に呼び寄せて一緒に暮らすことができます。
配偶者は婚姻中である必要があります。離婚した場合や死去した場合は含まれません。また内縁の配偶者も認められません。「子」については養子(普通養子及びと特別養子)も認められます。また、婚姻する前に生まれた子どもや、婚姻後まもなくの間に生まれた子(非嫡出子といいます)も認知をしていれば「子」として認められます。また、成年していても認められます。
※一部、「高度専門職1号・2号」や「特定活動・特定研究、特定情報処理」の方の場合、一定の条件下で自分や配偶者(妻・夫)の親を呼ぶこともできます。(本編では説明を割愛します。)
家族の「特定活動」を申請するときのの3つのポイント
家族帯同を認めている「特定活動」の要件の中でも絶対に外せない特に重要な3つポイントがあります。
ポイント① 婚姻が成立していること(妻・夫の場合)
在留資格の申請の際には、結婚が成立していることが条件となります。内縁関係、婚約状態では認められません。婚姻関係が法律上有効に存続していることが必要です。
結婚の手続きは、有効に成立していれば外国のみでも日本のみでも構いません(それぞれの国の法律によります)。例えば、母国にいる家族を招聘する場合に、わざわざ日本の役所で結婚届を出すことは必要なく、母国で結婚が成立していればそれを以って招へいすることは可能です。
また、逆に日本に在留中に結婚をした場合には、日本の役所に婚姻届けを提出し受理されていれば、母国の行政機関に提出ができていなくても問題ありません。
ポイント② 扶養をする能力があること/扶養を受けること
家族系の在留資格では、就労ビザで働く方の“扶養”を受けることが要件となります(特定活動38号を除く)。つまり、「扶養する能力がある」ことと、「扶養を受ける意思がありその状態で在留する」ことが必要です。
まず、「扶養する能力がある」についてですが、呼ぶ側が定職がある(お仕事をしている)必要があります。そもそも、就労ビザで在留している人は、(多くのケースで)フルタイムでお仕事をして、最低でも大人1人分の生活ができる程度のお給料をもらっているかと思います。無職の場合には、そもそも呼ぶ側が「就労ビザ」で在留するための条件が揃っていないので、家族を呼ぶことはできません。
よく、「どのぐらいの給料があれば許可されますか?」とお問合せをいただきますが、明確な基準はありません。それは、家族の人数や資産の状況等によって変わってくるからです。今現在の給料で日本で家族と問題なく生活できるだけの収入があれば問題ありません。
当事務所に聞こえてくる「噂」では、「月給25万円は必要」という話しがありますが、この情報は概ねデマと言えます。家族構成によっては「月給20万円」でも許可される場合もあれば、「月給30万円」でも不許可になる場合もあります。
次に、「扶養を受けること」についてですが、呼ばれる側は「家族滞在」の許可のほかに「資格外活動許可」というものを取ることで、アルバイトをすることも可能になりますが、あくまで「扶養の範囲」でなければなりません。
家族系の在留資格で在留する人は「資格外活動許可」を得られれば、週28時間までのアルバイトが可能です。このアルバイトの結果、就労ビザで働く扶養者の給料を超えるようなことがあれば「扶養の範囲」を超えてしまっており、「扶養を受けていない」という評価を受けてしまいます。
ポイント③ 同居をすること
特に夫婦の場合には、同居をしていることが原則となります。
日本の入管は「婚姻関係」の判断基準の一つに「同居」に着目をします。同居をしていない場合には、全てのケースで不許可になるわけではありませんが、事情を説明する必要があります。
想定される例としては、子どもを転校させることができないなどの理由で単身赴任をする場合や、大学進学のために子供が一人暮らしを始めることなどが想定されます。特に夫婦間の別居に対してはしっかりとした説明が必要になるため注意が必要です。
“告示外”の特定活動の場合は家族は呼べますか?
ここまでは「告示」の特定活動について説明しました。上記一覧にない「特定活動」の場合について説明をします。
告示外とは?
在留資格「特定活動」は、「告示特定活動」と「告示外特定活動」に分けることができます。
「告示」と「告示外」の分け方としては、あらかじめ活動内容が定められていて、法務大臣が告示をもって定めている活動の場合(活動内容や要件などが決まっている)は「告示特定活動」となり、それに該当しない場合(法務大臣が特別な事情により人道上在留を認める場合など)は「告示外特定活動」となります。
在留資格「特定活動」の方が在留中にできる活動内容は、個々の外国人ごとに活動内容が指定されています。その指定された活動内容はパスポートに添付さえている「指定書」というもので確認ができます。
また、「特定活動」の中でも「告示に定めがある」ものについては、上陸許可の対象となる在留資格「特定活動」であり、現在は一部削除されているものもありますが「1号」から「50号」まであります。
告示の特定活動は以下の一覧の通りです。
出所:出入国在留管理庁「在留資格「特定活動」について」
告示外の特定活動の場合は家族は呼べますか?
在留資格「特定活動」の場合、「告示に定めがある」ものについては、上陸許可の対象となる在留資格「特定活動」になり、「在留資格認定証明書交付申請」や在外の日本大使館で査証申請をすることはできますが、「告示外」の場合はできません。
もし、家族と一緒に住みたい場合には、一度、短期滞在などで来日してもらったうえで「在留資格変更許可申請」を行うことになります。個々の事情に応じて審査が行われることになりますが、家族の帯同が認められない場合もあるため、告示外の特定活動の方の家族の在留資格の申請については事前に最寄りの出入国に相談されるのがよいかと思います。
まとめ
以上、特定活動で在留する人の家族の在留資格について説明しました。
「告示特定活動」の方で、家族を呼ぶことができると定められている方の場合は家族も「特定活動」で日本で生活ができます。それ以外の方は、基本的に個々の事情に合わせて審査が行われますが、認められるものもあれば、認められないものもあります。そもそも「告示外特定活動」の場合、在留資格認定証明書交付申請はできませんので、すでに日本にいる方で別の在留資格からの変更をする手続きになります。
【行政書士からのアドバイス】
「特定活動」は「特定技能」に名前が似ていることから、家族は呼べないと勘違いがされがちですが、「家族滞在」のように生活できる場合もあります。